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古典に見るあじさい

日本最古の歌集である万葉集に、あじさいを詠んだ歌が2編があります。

言問はぬ 木すら味狭藍(あぢさゐ) 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)に あざむかえけり

ものを言わない木でさえ、あじさいのように色鮮やかに見せてくれますね。それ以上に言葉をあやつる諸弟たちの上手い言葉にすっかりだまされてしまったことですよ。と言う意味です。大伴家持おおとものやかもち)が後に妻として迎える坂上大嬢に贈った歌の一つです。

もう一つの歌は、橘諸兄(たちばなのもろえ)が詠んだもので、

あぢさゐの 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)

あじさいの花が八重に咲くように、いついつまでも栄えてください。あなた様を見仰ぎつつお慕いいたします。という意味です。

また、平安時代以降にも、様々な歌人たちが詠んだあじさいの歌が残されています。

あぢさゐの 花のよひらに もる月を 影もさながら 折る身ともがな
(俊頼『散木奇歌集』)

繁みを洩れた月の光が、池の面にあじさいの四ひらの花のように映じている。その影をさながら折り取ることができたらなあ。という意味です。

このほかにも・・・

夏もなほ 心はつきぬ あぢさゐの よひらの露に 月もすみけり
(藤原俊成『千五百番歌合』)

あぢさゐの 下葉にすだく蛍をば 四ひらの数の添ふかとぞ見る
(藤原定家)

このように、様々な歌が詠まれています。あじさいが、古くから日本人に親しまれてきた花であることを物語っていますね。