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三重塔 江戸の色彩美

成田山新勝寺は、年間約1,000万人以上の参詣者が訪れる名刹ですが、大本堂以外にもその広い境内には、数多くの見所があります。

1980年5月31日、成田山新勝寺の旧本堂である光明堂釈迦堂をはじめ、三重塔・仁王門・額堂の五棟が国の重要文化財に指定されました。
一寺院で五棟もまとめて重要文化財に指定されるのは、きわめて異例なことであり、近世の寺院建築を知る貴重な存在となっています。そのうちの一つ、創建当時のきらびやかな姿を今に伝える三重塔についてご紹介します。

大本堂向かって右側に建つ三重塔は、中興の祖といわれている照範上人が霊夢を感じて発願し、4年がかりの工事を経て、1712年に建立されました。
その後修復が行われ、創建当時の姿を今日まで残している貴重な建物です。

特筆すべきは、その色彩美。
息をのむような極彩色のパノラマがひろがります。
記録によると3寸5分(約10.6センチメートル)四方の金箔が、1階にあたる初重だけで19,000枚も使われています。

基調となる色は、朱色。水銀を混ぜた水銀朱と鉛を混ぜた丹朱を顔料として使用しており、場所によって色の微妙な違いを見ることができます。
この朱色には、防腐剤の役割と魔よけの意味がこめられています。

2008年の大開帳にあわせて、漆塗りの彩色の修復が施され、当時のきらびやかな姿が現代によみがえりました。

雲水紋の彫刻を施した各層の垂木は一枚板でつくられ大変珍しく、古来から有名でした。

江戸時代の地誌「古今佐倉真佐子」に、「本堂の右に三重塔ある。正徳の頃建つ。
赤銅瓦、屋根裏雲水の板、雲に水の彫刻彩色なり。
大和(日本)二十四考の彫物唐木まがい。
五智の如来本須弥壇。
大阪天王寺の塔のうつし、大阪へ行て見しに同じ事なり」とその様子が記されています。

ぐるり囲む金色の龍の彫刻も美しく、晴天の日に見上げれば、金龍が極彩色の雲水を青空に向かって飛翔するかのように見えました。

高さは、相輪(塔の上についている金属製の飾り)を含めて約25mあります。
初重内陣には五智如来、つまり5つの智慧を備えるといわれる、大日如来・阿しゅく如来・宝生如来・阿弥陀如来・不空成就如来を奉安し、五智三重塔ともいわれています。
周囲には、世にとどまって仏法を護持する「十六羅漢」の彫刻がめぐらされています。

成田山をご参詣の折には、重文指定の江戸期の堂塔から大本堂を始めとする、日本の文化遺産の伽藍群を、是非ご覧下さい。